総則
基本理念
医療の場では医療従事者の不注意が、単独あるいは重複して医療上望ましくない事態を起し、患者の安全を損なう場合がある。患者の安全を確保するためには、まず、われわれの不断の努力が求められる。さらに、日常診療の過程でマニュアル化を行うなど、単独の過ちが患者に実害を及ぼす医療事故に発展しない仕組みを構築することが重要である。
本指針はこのような考え方のもとに、それぞれの医療従事者の個人レベルでの事故防止対策と、医療施設全体の組織的な事故防止対策の二つの対策を推し進めることによって、医療事故を無くし、患者が安心して安全な医療を受けられる環境を整えることを目標とする。本院においては、全職員がそれぞれの立場からこの問題に取り組み、患者の安全を確保しつつ必要な医療を提供していくものとし全職員の積極的な取り組みを要請する。
用語の定義
本指針で使用する主な用語の定義は、以下のとおりとする。
医療事故 (アクシデント) |
医療の過程において患者に発生した望ましくない事象。また、医療提供側の過失の有無は問わず、不可抗力と思われる事象も含む。 |
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インシデント | 医療事故には至らなかったが、発見、対応等が遅れれば患者に有害な影響を与えたと考えられる事例。「ヒヤリ・ハット」「ニアミス」と表現される場合もある。 |
エラー | 人の誤り全般を指し、ミステイクとスリップに分けることができる。 |
ミステイク | 分かっていながら不適切な目標を選ぶ思い違い。 |
スリップ | 無意識に本来の目標とは異なった目標を選ぶ過ち、うっかりした誤り。 |
本院 | いなみ野病院 |
職員 | 本院に勤務する医師、看護師、薬剤師、理学療法士、事務職員等あらゆる職種を含む。 |
実行委員長 | 医療安全管理に必要な知識および技能を有する職員であって、病院長の指示により、本院全体の医療安全管理を中心的に推進する担当者。 |
組織および体制
本院における医療安全対策と患者の安全確保を推進するために、本指針に基づき以下の役職および組織等を設置する。
- 実行委員長(医療安全管理推進者)
- 安全管理対策委員会
- 医療に係る安全確保を目的とした報告
- 医療に係る安全管理のための研修
安全管理対策委員会
安全管理対策委員会の設置
本院における医療安全管理を統計的に企画、実施するために、安全管理対策委員会を設置する。
委員会の構成
- 安全管理対策委員会の構成は、以下のとおりとする。
- 院長(委員会の委員長を務める)
- 事務部長(副委員長を務める)
- 医療安全推進者(委員長を兼任)
- 看護部長
- 薬剤室責任者
- 看護師長
- 地域連携室責任者
- リハビリテーション室責任者
- 事務部担当責任者
- 栄養室責任者
- 管理栄養士
- 施設課職員
- 委員会の会議には、管理者として必要に応じて病院長が同席する。
- 委員の氏名および役職は公表する。
- 委員長が不在のとき、副委員長もしくは委員長補佐がその職務を代行する。
安全管理対策委員会メンバー
- 院長
- 事務部長
- 看護師長
- 薬剤室室長
- リハビリテーション室課長
- 地域連携室課長
- 事務部課長(施設担当)
- 看護部長
- 看護師長
- 栄養室課長
- 管理栄養士
- ※各所属長が委員となります。
任務
安全管理対策委員会は、主として以下の任務を負う。
- 委員会の開催および運営
- 医療に係る安全確保を目的とした報告で得られた事例の発生原因や再発防止策の検討および職員への周知
- 院内の医療事故防止活動および医療安全に関する職員研修の企画立案
- その他、医療安全の確保に関する事項
委員会の開催および活動の記録
- 委員会は原則として、定例委員会を毎月第3月曜午後に開催するほか、必要に応じて委員長が召集する。
- 委員長は、委員会を開催したときは、速やかに検討の要点をまとめた議事の概要を作成し保管する。
- 委員長は、委員会における議事の内容および活動の状況について、必要に応じて病院長に報告する。
報告等による、医療の安全確保を目的とする改善策の策定
報告とその目的
この報告は、医療安全を確保するためのシステムの改善や教育・研修の資料とすることのみを目的とする。報告者はその報告によって何ら不利益を受けないことを確認する。具体的には、
- 本院内における医療事故や、危うく事故になりかけた事例を検討し、医療の改善に資する事故予防対策、再発防止策を策定する。
- これらの対策の実施状況や効果の評価・点検に活用しうる院内全体からの情報を収集する。
これらの目的を達成するため、すべての職員は次項以下に定める要領に従い、医療事故等の報告を行うものとする。
報告に基づく情報収集
医療事故の未然防止・再発防止に資する対策を策定するためにアクシデントおよびインシデント事例等の情報を収集する。すべての職員は以下の要領に従い、医療事故等の報告を必ず行う。
- 職員からの報告書
職員は、次のいずれかに該当する状況に遭遇した場合には、所定の報告書(別紙様式1)より、速やかに報告する。報告は、診療録、看護記録等に基づいて作成される。
- アクシデント
- インシデント
- 報告書のルート
報告書は、まず所属長に手渡され、所属部長を経て委員会の実行委員長に届けられ、病院幹部、さらに病院長に達し確認される。
- 報告された情報の取扱い
報告書は委員会において集積され保存される。病院の管理的地位にある者は、報告を行った職員に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行ってはならない。
報告内容に基づく改善策の策定とその評価
安全管理対策委員会は、前項にもとづいて収集された情報を、本院の医療の質の改善に資するよう、以下の目的に活用するものとする。
- 報告の検討と事故防止対策の策定および職員に周知
アクシデントとインシデント事例等を分析し、その再発防止対策、あるいは事故予防対策を策定し、職員に周知徹底すること。
- 改善効果の確認と評価
報告書は、まず所属長に手渡され、所属部長を経て委員会の実行委員長に届けられ、病院幹部、さらに病院長に達し確認される。
- 報告された情報の取扱い
上記(1)で策定した事故予防対策が、各部門で確実に実施され、事故防止、医療の質の改善に効果を挙げているかを確認し、評価する。
安全管理のためのマニュアルの作成
本指針の運用後、多くの職員の積極的な参加を得て、医療や療養援助に関わる具体的な安全で適切なマニュアルを作成し、絶えず見直しを図るように努める。マニュアルは、作成、改変のつど、全職員に周知徹底させる。
医療安全管理のための研修
- 医療安全のための研修の実施
安全管理対策委員会において作成した研修計画にしたがい、概ね6カ月に1回、および必要に応じて、全職員を対象とした医療安全管理のための研修を実施する。職員は、委員会により実施される研修には、受講するよう心掛けなければならない。研修を実施した際は、その概要を記録して保管する。
- 研修の趣旨
研修の目的は、医療安全管理の基本的な考え方、事故防止の具体的な手法等をすべての職員に周知徹底することを通じて、個々の職員安全意識の向上を図るとともに、病院全体の医療安全を向上させることである。
- 研修の方法
研修は、院内講義や報告会、事例分析を行うこと、また外部講師を招聘する講習、外部の講習会・研修会伝達報告会等への参加または有益な文献等の抄読などの方法によって行う。
情報の共有および相談への対応
- 医療従事者と患者との間の情報の共有
本指針は、患者およびその家族等から閲覧の求めがあった場合には、これに応じるものとする。指針に対する問い合わせには、安全管理対策委員会が対応する。
- 患者からの相談への対応
病状や治療方針等に関する患者およびその家族等からの相談については、主治医が誠実に対応し、必要に応じて安全管理対策委員会に内容を報告する。
本指針の見直し、改正
安全管理対策委員会は、少なくとも毎年1回以上、本指針の見直しを議事として取り上げ、検討するものとする。また、本指針の改正は、安全管理対策委員会の決定により行う。