兵庫大学学長 河野真氏 対談 加古川市長 岡田康裕氏

加古川市の岡田市長と兵庫大学の河野学長にうかがう 加古川市にとっての「介護医療院」とは?

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岡田市長

現在、加古川市で暮らす市民の4人に1人が高齢者です。そして、今後さらに高齢化が進行していくことが見込まれるとともに、一人暮らし高齢者や認知症の高齢者の増加が予測され、高齢者やそのご家族を取り巻く環境が大きく変化していく中で、多くの課題が生じています。

本市ではすべての団塊世代が75歳を超える2025年を見据え、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、さまざまな観点から「地域包括ケアシステム」の構築に取り組んできました。今回、その中で「医療機能」と 「生活施設」と兼ね備えた「介護医療院」の新設は、加古川市全体の地域医療という観点で、大きな期待と役割を担っていると言えるのではないでしょうか。

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河野学長

加古川市に限らず、日本はこれまでに経験したことのない本格的な超高齢社会に突入しました。
「自宅で最期を迎えたい」というのは、多くの人が願う最期の在り方ではありますが、生活スタイルの多様化により高齢者が高齢者を看護することや、離れて暮らす子どもが親の介護をすることへの限界は自ずと生じる問題であり、大きな課題でもあります。

こういった近い将来、日本が直面する問題・課題に対して、医療・介護の両面からサポートしてもらえる「介護医療院」は、利用者にとってはもちろん、要介護者を支える家族にとっても一筋の光となる重要な役割を担うと考えられます。

「介護医療院」に求められるものとは何でしょうか?

岡田市長

この度、新たに「介護医療院」が開設された背景には、利用者にとって「終の棲家」としての役割を担うという側面があるかと思います。棲家である以上、利用者にとっての「住まいとしての場」や「家族との憩いの時間」といった、その方らしい豊かな暮らしが提供できることが、今後ますます「介護医療院」に求められていくことではないでしょうか。

河野学長

岡田市長のおっしゃる通り、豊かな暮らしができることは「介護医療院」では必要不可欠な要素の一つだと思います。「豊かな暮らし」というものを考えたとき、その施設で働く医師や看護師といったスタッフとの関わり以外にも、利用者が家族や地域、コミュニティとどう関わっていけるのかも重要なポイントになってくると思います。

「介護医療院 いなみ野病院」は
地域にとってどのような存在になるでしょうか?

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岡田市長

加古川市では2025年までの中長期的な視野に立った地域包括システムの中に、『住み慣れた地域で支え合い 年輪をかさねるまち 加古川』という理念を掲げています。今後、高齢化が進み社会から孤立しやすくなることや、医療や介護が必要となる高齢者が増加するにつれ、すべての高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、健康寿命の延伸とともに、その人の状況に応じ人生の終末期を迎えられることが豊かさのひとつだと考えています。

それを実現していくためには、地域住民やボランティアなど、身近で温かみのある支え合いや助け合いが重要となります。それは、「公助」「共助」といった公的な福祉サービスの制度の充実に加え、高齢者本人や家族による「自助」、地域ネットワークやボランティアによる「互助」による取り組みが必要となります。

今回、新たに新設される「いなみ野病院 介護医療院」では、加古川市が掲げる『住み慣れた地域で支え合い 年輪をかさねるまち 加古川』を実現するために必要な、「公助」「共助」「自助」「互助」が連携した「介護医療院」の先駆者として、加古川市のみならず日本の高齢化社会に対して、新しい仕組みやシステムの構築が期待されるのではないでしょうか。

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河野学長

「介護医療院」として利用者が個人の生活や地域における豊かな暮らしを送るためには、ボランティアの協力は必要不可欠だと考えます。わたくしども兵庫大学でも「兵庫大学ボランティアセンター」において、学生たちによるさまざまなボランティア活動が行われていて、これまでに福祉や介護に興味を持つ学生たちが、実際にいなみ野病院でボランティアに参加させてもらっています。

また、「加古川ボランティアセンター」など、多くのボランティア活動を希望する人や団体との繋がりを強化しながら、ボランティア情報の収集やボランティアスタッフのマッチングなども行っていく必要があると思います。

「介護医療院」の利用者にとっての生活の場として、また生活の豊かさを提供する上で、どんなニーズがあり、どんな担い手が必要で、誰をどこに送り込むのか。こういった地域ボランティアが円滑に循環し、目的と意義を持った活動の場としても「介護医療院」には大きな可能性が秘められているのではないでしょうか。

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加古川市役所内で行われた、岡田市長と河野学長との面談。いなみ野病院からは、看護部長(右から2番目)をはじめとする、事務部長(左)、事務部副部長(右)が同席し、加古川市や東播磨地域での地域連携へと取り組みについて、活発な意見交換がなされた。